社会福祉法人への土地譲渡

個人が社会福祉法人に不動産を譲渡した場合に、控除があるか?

結論
下記のⅠ(収用)に該当する場合は、5000万の控除がある。
売却益より5000万控除して税金の計算が行われる。
ただし、手続きは事前協議など煩雑である。

収用に該当しない譲渡場合は、特に控除はないが、みなし譲渡について注意が必要である。
詳細は下記Ⅱ。

 

Ⅰ.土地収用法等の規定により収用される土地の譲渡所得
・5000万円の特別控除がある。(措置法33条の4、土地収用法第3条23号)

この規定の適用を受けるためには、その一連の行為が土地収用法第3条のいずれかに該当する事業で、高い公益性を持ち、土地の適正かつ合理的な利用に寄与するかどうか、各都道府県などの事業認定を受け、かつ収用委員会の裁決を受ける必要があります。

<土地収用法第3条(一部のみ抜粋)>
土地を収用し、又は使用することができる公共の利益となる事業は、次の各号のいずれかに該当するものに関する事業でなければならない。
【第23号】
社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)による社会福祉事業若しくは更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)による更生保護事業の用に供する施設又は職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)による公共職業能力開発施設若しくは職業能力開発総合大学校

<収用裁決を受けるための手続き>
(1)事業認定
起業者(土地を購入する予定の公益法人等)が都道府県知事に対して事業認定の申請を行います。その申請書は起業地が所在する市町村で2週間公告・縦覧されるのと同時に、公聴会の開催や第三者機関の意見聴取などが行われます。
(2)収用裁決
認定を受けた起業者は、収用委員会に対して裁決の申請を行います。収用委員会はその申請に対して審理を行い、裁決を下します。
(3)補償金の支払い及び土地の権利取得
起業者は、その土地の所有者に対して補償金を支払うことにより、その土地の引き渡しを受けます。所有者が引き渡さない場合は代執行されます。

 

Ⅱ 土地収用法等の規定によらない譲渡
(1) みなし譲渡課税
事例として
1. 時価1000万の不動産を1000万で譲渡した場合
2. 時価1000万の不動産を800万で譲渡した場合
3. 時価1000万の不動産を400万で譲渡した場合
4. 時価1000万の不動産を無償で譲渡した場合(寄付となる)

それぞれのケースで考えてみます
1. 1000万の譲渡収入として課税されます。いわゆる控除はありません。
2. 800万の譲渡収入として課税されます。いわゆる控除はありません。
3. 1000万で譲渡があったものとして課税されます。
4. 1000万で譲渡があったものとして課税されます。

3,4は「みなし譲渡課税」(所得税法第59条第1項第1号)といって、時価の1/2以下で譲渡した場合に、時価で譲渡したものとされるものです。

(2)みなし譲渡課税非課税(措置法40条)
ただし、みなし譲渡課税非課税(措置法40条)というのもあり、この所得税を非課税とするものです。

非課税になるには、具体的には、以下の3つの要件を満たす必要があります。
①  公益増進要件:
その寄付が、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること
②  事業供用要件:
寄付財産を寄付があった日から2年を経過する日までの期間内に受贈法人の公益目的事業の用に直接供する、又は供する見込みであること。
③  不当減少要件:
その寄付が寄付者又はその親族等の相続税、贈与税の負担を不当に減少する結果とならないと認められること

また、この措置法40条の適用を受けるにあたっては次の問題があります。
④ みなし譲渡課税が非課税になるには国税庁長官の承認を受ける必要がある。その承認を受けるまで2~3年かかるといわれています。

⑤ 事業供用要件で、「直接公益目的事業の用に供すること」と「直接」という文言があるために、不動産や有価証券の寄付を受けても、寄付を受けた社会福祉法人が、その不動産を売却したり、家賃収入を公益事業に使った場合には、非課税措置が受けられません。
不動産であれば、その不動産を、例えば障害者のグループホームに使うなど、直接公益事業に使う以外は非課税措置が受けられませんでした。

(3)平成29、30年改正
29、30年の2年間にわたる改正で上記の扱いが以下のように変更されました。
<29年改正>
一定の財産(不可欠特定財産)について、承認特例の適用を受けることができるようになりました。承認特例とは、措置法40条の非課税に関する書類を提出して1月以内にその申請について国税庁長官の承認がなかった、あるいは承認しないことの決定がなかった場合には、承認があったものとみなす、というものです。

<30年改正>
承認特例の適用を受けることができる寄付財産が、不可欠特定財産に限らず、行政庁の確認を受けた「基金」(社会福祉法人の場合は基本金)の中で寄付資産を管理する等の一定の要件を満たす場合には、この承認特例が受けられることになりました。
また、基金(社会福祉法人の場合は基本金)に組み入れて管理し、その後買い替えた資産をその基金(社会福祉法人の場合は基本金)の中で管理する等の一定の要件を満たす場合には、公益法人が国税庁長官へ必要書類を提出することで、引き続き非課税措置を受けることができるようになりました(特定買換資産の特例)。