目次

はじめに
利用者等から固定資産の贈与を受けた場合
理事長から固定資産の贈与を受けた場合
自治体から固定資産を無償で譲渡された場合
留意点

 

はじめに

このページでは、金銭の寄附ではなく、土地や建物など固定資産の寄附を受けた場合、もしくは無償で固定資産の譲渡を受けた場合の会計処理をまとめます。

固定資産を寄附物品等として無償で取得した場合、誰からどのような目的で受贈したかによって、会計処理が以下のように異なります。

 

①利用者等から固定資産の贈与を受けた場合 ⇒「固定資産受増額」を計上
②理事長等から施設の創設・増築の為に固定資産の贈与を受けた場合
               ⇒①に加え、基本金の組み入れが必要
③自治体から固定資産を無償で譲渡された場合
               ⇒①に加え、国庫補助金等特別積立金の積み立てが必要

具体的な例を交えて、仕訳を確認していきましょう。

利用者等から固定資産の贈与を受けた場合

【例】利用者の家族から、車輛(時価200万円)の寄附を受けた。

(借)車輛(B/S) 2,000,000円 / (貸)車輛運搬具受増額(P/L) 2,000,000円

 

固定資産の受贈を受けた場合は、「施設整備寄附金収益」ではなく、「固定資産受増額」の科目を用います。(寄附金の会計処理については、こちらのページをご参照ください。)

なお、受贈によって取得した資産の取得価額は、その取得時における公正な評価額、すなわち当該資産の取得のために通常要する価額をもって行います。

14 受贈、交換によって取得した資産について(会計基準省令第4条第1項関係)
(1)通常要する価額と比較して著しく低い価額で取得した資産又は贈与された資産の評価は、取得または贈与の時における当該資産の取得のために通常要する価額をもって行うものとする。

「社会福祉法人会計基準の運用上の取り扱い」より

 

理事長等から施設の創設・増築の為に固定資産の贈与を受けた場合

【例】近隣の方から、社会福祉事業に使ってほしいと土地(時価3,000万円)の贈与を受けた。

(借)土地(B/S基本財産) 30,000,000円 / (貸)土地受増額(P/L) 30,000,000円
(借)基本金組入額(P/L) 30,000,000円 / (貸)基本金(B/S)   30,000,000円

 

社会福祉法人の設立並びに施設の創設及び増築等のために基本財産等を取得した場合、基本金の組み入れが必要となります。
基本金の会計処理については、こちらのページをご参照ください。

 

自治体から固定資産を無償で譲渡された場合

【例】自治体より保育所の建設地(時価1,500万円)を無償で譲渡された。

(借)土地(B/S基本財産) 15,000,000円 / (貸)土地受増額(P/L) 15,000,000円
(借)国庫補助金等特別               (貸)国庫補助金等特別
   積立金積立額(P/L) 15,000,000円 /    積立金(B/S)    15,000,000円

 

自治体には寄附概念がないため、基本金ではなく「国庫補助金等特別積立金」を積み立てることとなります。
建物のような償却資産に対する国庫補助金等特別積立金は、減価償却に伴い取り崩されていきますが、土地のような非償却資産については減価償却に伴う国庫補助金等特別積立金の取崩はありません。

留意点

●固定資産の寄附を受けた場合は、附属明細書「寄附金収益明細書」への記載が必要です。
●基本金の組入を行った場合は、附属明細書「基本金明細書」への記載が必要です。また、基本財産の増減についての注記も必要になります。
●国庫補助金等特別積立金の積み立てを行った場合は、附属明細書「国庫補助金等特別積立金明細書」への記載が必要です。
●10万円未満の物品の寄附を受けた場合は、「経常経費寄付金収益」の科目を用います。寄附金の会計処理については、こちらのページをご参照ください。

固定資産を無償で取得した場合の会計処理について迷われたら、税理士法人はるかへご相談ください。