目次

はじめに
基本金の種類
基本金の組入れの処理
基本金の取崩しの処理
留意点

 

はじめに

このページでは、基本金の処理についてまとめます。

第6条
基本金には、社会福祉法人が事業開始等に当たって財源として受け入れた寄附金の額を計上するものとする。

「社会福祉法人会計基準」より

基本金とは、社会福祉法人が設立並びに施設の創設及び増築等に当たって財源として受け入れた寄附金であり、社会福祉事業の対価とは明確に区別されます。基本金は、社会福祉法人を運営していく限り、原則として維持されつづけられる純資産です。

 

基本金の種類

基本金には、第1号基本金から第3号基本金までの3種類があります。
期中に仕訳を切る際には、基本金の種類を意識する必要はありませんが、決算において附属明細書「基本金明細書」を作成する際に必要な情報ですので、明確に区別しておく必要があります。

 

11 基本金への組み入れについて(会計基準省令第6条第1項、第22条第4項関係)
会計基準省令第6条第1項に規定する基本金は以下のものとする。
(1) 社会福祉法人の設立並びに施設の創設及び増築等のために基本財産等を取得すべきものとして指定された寄附金の額
(2) 前項の資産の取得等に係る借入金の元金償還に充てるものとして指定された寄附金の額
(3) 施設の創設及び増築時等に運転資金に充てるために収受した寄附金の額

「社会福祉法人会計基準の運用上の取り扱い」より

第1号基本金

「社会福祉法人の設立並びに施設の創設及び増築等のために基本財産等を取得すべきものとして指定された寄附金の額」とは、土地、施設の創設、増築、増改築における増築分、拡張における面積増加分及び施設の創設及び増築等事における初度設備整備、非常通報装置設置整備、屋内消火栓設備整備等の基本財産等の取得に係る寄附金の額です。

寄附金にて10万円未満の固定資産である初度調度物品を整備した場合も、基本金組入の対象となります。(※旧基準では、固定資産に計上されないものは基本組入から除外されていました。)

地方公共団体から無償又は低廉な価格により譲渡された土地、建物の評価額(又は評価差額)は、寄附金とせずに、国庫補助金等に含めて取り扱われます。

また、設備の更新、改築等にあたっての寄附金は基本金には含まれません。

第2号基本金

「資産の取得等に係る借入金の換金償還に充てるものとして指定された寄附金の額」とは、施設の創設及び増築等のために基本財産等を取得するにあたって、借入金が生じた場合において、その借入金の返済を目的として収受した寄附金の総額をいいます。

第3号基本金

「施設の創設及び増築時に運転資金に充てるために収受した寄附金の額」とは、社会福祉法人審査要綱に規定する、当該法人の年間事業費の12分の1以上に相当する寄附金の額及び増築等の際に運転資金に充てるために収受した寄附金の額を言います。

年間事業費の12分の1未満の寄附金は、「経常経費寄附金収益(収入)」で処理し、基本金の組入は行いません。

 

基本金の組入れの処理

基本金への組入れは、寄附金を事業活動計算書の特別収益に計上した後、その収益に相当する額を基本金組入額として特別費用に計上して行います。
具体例で、仕訳を確認しましょう。

【例】施設の創立にあたって、寄附金5,000万円を受領した。

(借)現金預金(B/S)  50,000,000 /(貸)施設整備等寄附金収益(P/L) 50,000,000

(借)支払資金(C/F)  50,000,000 /(貸)施設整備寄附金収入(C/F)  50,000,000

(借)基本金組入額(P/L)50,000,000 /(貸)基本金(B/S)        50,000,000

※施設整備等寄附金収益…特別収益  基本金組入額…特別費用

 

基本金の取崩しの処理

11 基本金の取崩しについて(会計基準省令第22条第6項関係
社会福祉法人が事業の一部又は全部を廃止し、かつ基本金組み入れの対象となった基本財産又はその他の固定資産が廃棄され、又は売却された場合には、当該事業に関して組入れられた基本金の一部又は全部を取り崩し、その金額を事業活動計算書の繰越活動増減差額の部に計上する。

「社会福祉法人会計基準の運用上の取り扱い」より

基本金の取崩しは、次の2要件を満たした時に実施します。

① 事業の一部又は全部を廃止
② 基本金組入れ対象となった固定資産を廃棄又は売却

 

先ほどの例で、仕訳を確認しましょう。

【例】数年後、上記事業を廃止し、寄附金にて整備した建物(簿価100万円)を廃棄した。

(借)建物除却損(P/L) 1,000,000 /(貸)建物(B/S基本財産) 1,000,000

(借)建物除却支出(C/F)1,000,000 /(貸)支払資金(C/F)   1,000,000

(借)基本金(B/S)   50,000,000 /(貸)基本金取崩額(P/L) 50,000,000

※基本金組入対象の固定資産を廃棄(除却)しても、事業を廃止しなければ、基本金の取崩しは生じない点は、国庫補助金等特別積立金の取崩しと異なります。

 

留意点

●基本金の取崩しを行った場合には、その旨の注記が必要です。
●基本金の組み入れ及び取崩については、附属明細書「基本金明細書」に、それらの内容を記載する必要があります。
●寄附金を、複数の施設に対して一括して受け入れた場合には、最も合理的な基準に基づいて各拠点区分に配分します。
●基本金の組み入れは会計年度末に一括して合計額を計上することもできます。
●基本金を取り崩す場合には、基本財産の取崩と同様、事前に所轄庁に協議し、内容の審査を受けなければなりません。

 

基本金の処理について迷われたら、税理士法人はるかへご相談ください。